みなさまこんにちは。
日本ティー&ハーブ協会の英国支部長の宮田華子です。
毎回英国から、暮らしにねざしたティーやハーブの楽しみ方をお伝えできたらと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
今回は「ミント」についてです。
日本人がハーブと聞いて、最初に思い浮かべるのものの1つがミントではないでしょうか?
歯磨き粉やガム、キャンディーなどの口に入るもの、そしてシャンプーや石けんなどのビューティープロダクトなど、さわやかなミントの味と香りが人気の商品は多々ありますね。
ミント(Mint)とはシソ科ハッカ属(ミント属、メンタ属)の総称です。大きくわけてスペアミント系とペパーミント系があります。胃腸の調子を整え、発汗促進、血管の拡張、防虫、抗菌、消炎作用があり、また気持ちを落ち着ける作用もあると言われています(※)。
*ペパーミント系:香りが強く、ひやっとした成分であるメントールの含有量が多い。
*スペアミント系:マイルドな香りと甘い味が特徴。
地植えすると雑草以上に繁殖し、他の植物を侵食してしまう恐れがあるので、プランターで栽培したほうが管理が簡単です。
英国ではスーパーや八百屋さん、ファーマーズマーケットなどで手軽にフレッシュ(生)ミントを購入することができますが、私はもっぱら近所のトルコ系八百屋さんで買っています。
*トレイに入って陳列されているハーブ。こちらは89ペンス(170円ぐらい)
駅前商店街的なストリートにはかならず小さな移民系八百屋さんがあり、どこもハーブ類が充実していてありがたい存在です。ミントは片手でやっとつかめるぐらいの大きな1束でも1ポンド(150円)以下。ちなみにスーパーマーケットでは半分ぐらいの量でもう少し高めです。
見ているそばからどんどん売れていくので、いつも新鮮なものが並んでいるのも嬉しい限りです。
フレッシュミントティー、2つの淹れ方
もっとも一般的なフレッシュミントの利用法は、ミントティーです。きっとこれは英国でも日本でも同じですね。大抵どのカフェにもメニューにミントティーがありますが、ティーバックがほとんどです。
フレッシュミントを使っているお店はオーガニック系のカフェやちょっと高級なレストランが多いのですが、お値段はティーバッグに比べてやや高めです。
こんな風に↑ガラスのポット入りでサーブされることが多く、適量のミントを入れたポットに熱湯を注ぎ3~5分蒸らしてからいただきます。はちみつを混ぜたり、レモンを入れるとふっくらとした甘みが増します。
私も以前はこの方法で淹れていたのですが、数年前にモロッコに行ったとき、もう1つの淹れ方&飲み方を憶えました。
マラケッシュのバザールには安くておいしいモロッコ料理の屋台がたくさん並んでいますが、どの屋台にもミントをギュウギュウに詰め込んだガラスのコップがずらり。その上に角砂糖が2個のっています。注文するとミントの角砂糖の上から熱湯を注ぎ、サーブしてくれます。
*マラケッシュのバザール(野外市場)。夕方になると、無数の屋台が並びます。
その“たっぷりすぎる”ミントの量に驚きつつ注文してみたのですが…鮮烈な味に驚きました。
ポットの中で葉を蒸らして味がでてくるのをゆっくり待つ…というより、新鮮さをキュっと飲む、という感じです。小さめのコップで作り、1杯目を飲み終えてからまた熱湯を注ぐと、今度は葉を蒸らしたときのふんわりとした美味しさが味わえます。
*このぐらいギュウギュウにミントを詰め込みます。茎を入れるとやや渋みが増し、葉だけだと柔らかい味になります。
私は砂糖を入れずに飲みますが、お砂糖を入れたほうが美味しいという人が多いようです。2杯目以降は柔らかい味になるので、はちみつを入れても美味しいです。
ミントを料理に使う!?
ミントティー以外ではアイスクリームの上に飾ったりチョコレート菓子に入れる等、スイーツの香りづけやいろどりに使うもの― これが私のフレッシュミントのイメージでした。
しかし英国では日本ではちょっと考えられない組み合わせでスイーツ以外の調理にも使うのです。
例えば「グリーンピース&ミント」。
これはお肉料理の付け合わせとして、英国ではお馴染みの組み合わせです。グリーンピースを茹で、塩味とミントのみじん切りでさっと煮て味付けしたものです。
「歯磨き粉の味を、肉や野菜に合わせて美味しいの!?」と最初は戦々恐々だったのですが、食べてみるとこれが案外悪くないのです。
爽やかさは残りつつも、熱を加えることで歯磨き粉のような口に残る刺激はなくなります。グリーンピースの甘さ、そして塩味に爽やかなアクセントが残る程度なので美味しく食べられます、
それからもう1つ、「ミントソース」も定番です。これはみじん切りにして火を通したミントを甘酢漬けにしたもので、お肉、特にラム(子羊)肉とよく合うと言われているソースです。どのスーパーでも手に入ります。
英国人は「お肉に臭みがある」という言い方をしませんが、肉特有の野性味を消し、甘酸っぱさが加わって美味しく食べられるのです。英国人はこのソースが大好きです。
*こんな風に、ラム肉に掛けたり添えたりしていただきます。
私自身はソースのファンではないのですが…でも何度か食べているうちに「ミントとお肉は合う」という英国人の感覚は分かってきました。そして先日ミントのレリッシュ(薬味)を肉料理に添えていた一皿を食べたのですが「ああ、これは合う!」と素直に感心し、作り方を聞いてみました。これがびっくりするほど簡単!なのです。
ミントを刻み、お好みの分量でオリーブオイルと塩少々で和えるだけ。
しっかり味のついたトマトソースにも合うと言われたので、ミートボールをトマトソースで煮込んだものに添えてみました。
ミントに火は通していませんが、オリーブオイルで和えるとツンツンした香りが抜けるのでさっぱり感だけが残ります。コリアンダーやバジルが好きな方には合う味です。
お皿に緑が欲しいとき、さっぱりお肉料理を食べたいときにぜひオススメです。
今回はちょっと意外なミントの使い方をご紹介しましたが、今後も日本とは異なるハーブの使い方をご紹介していけたらと思っています。
まだまだ寒い日が続きますが、ミントには体を温める効果もあるとのこと。涼しいイメージのハーブなので意外に感じると思いますが、シソ科のハーブには発汗効果があるため、体を芯からあたためてくれます。
美味しいミントティーで体を温め、寒さを乗り切って下さい。
ではまた次回お目にかかります!
(※効果には個人差がありますのでご注意下さい。)